工房で作る石けんたちの水は、
全て芳香蒸留水を使っています。
ところで、
芳香蒸留水ってなんじゃい?
って、ところもあると思うので
今日は芳香蒸留水の作り方の話です。
*
まずは名前の話。
芳香蒸留水は、
・ハーブウォーター
・フローラルウォーター
・アロマウォーター
・ハイドロゾル
ともいいます。
名前の段階でちょっとエピソード。
芳香蒸留水の勉強していて、
初めて知ったことがあったんです。
それは、
精油を作る目的ではなく
芳香蒸留水を作る目的で
水蒸気蒸留をしていた歴史が
あったということなんです。
井上重治先生の書籍より引用します。
特にハイドロゾルと言う言葉は
旧フランス薬局方で、精油ではなくハーブウォーターを得る目的で水蒸気蒸留した場合に使用されていたようです。著書:ハーブウォーターの世界
しかも!
水蒸気蒸留法はハーブウォーター製造のために誕生しました
著書:ハーブウォーターの世界
この一文に
めちゃくちゃびっくりした
んです!
だってね、
現代で芳香蒸留水とは
精油を作るときの副産物として
位置づけられています。
でも本当は逆で、
芳香蒸留水を作っていたら
精油が出来上がった
って、関係性だったんですね。
芳香蒸留水あっての精油
ということなんです。
今となっては精油の方が一般的だけど、
芳香蒸留水の方が
活躍していた歴史があった
ということなんですね~。
*
ということで、
「芳香蒸留水すげ~」
ってなったところで
なったよね?
なったよね?
なったよね?
笑
いよいよ芳香蒸留水の
作り方の話に移ります。
今回のハーブはレモンバーム。
(大好きな近所のパン屋さん、ミキベーさんのお庭にもしゃもしゃ育っていたレモンバームたち。図々しくも「あれいただいてもいいですか?」って、聞いたら「いいよいよ。いくらでも持っていってー。増えすぎて困っていたのよ~」と、気前よく言ってくださったので、遠慮なくいただいてきました。)
新鮮なレモンバーム。
置いているだけで
工房中にいい香りが漂います。
水道水で洗います。
じゃぶじゃぶ。
少し細かくします。
いざ蒸留器へ~
遠目のアングル。
少し寄ります。
ギュっと圧縮します。
水を注いで~
(水が茶色いのは、ギュっと絞ったレモンバームのエキス。)
加熱。
10分くらいで芳香蒸留水が溜まってきます。
1回の蒸留で150~200㏄くらい。
ここまでの工程が
1時間あるかないかくらい。
って、言っても
セットしたあとは、
水蒸気が水に変わり、
冷やされ蒸留水になり、
流れてビーカーに溜まるのを
ただただ見ている
のが芳香蒸留水を作ることです。笑
(途中、冷却用の氷を入れる作業はある。)
*
ということで、
湯河原町の石けん工房の
石けんに使っている、
芳香蒸留水の作り方風景でした。
こんな風にして出来上がった
芳香蒸留水で当工房の石けんたちは
作られています。
ちなみに~
石けんの原材料とは、
油・水酸化ナトリウム・水
の3つで作られます。
ここでいう”水”が、
湯河原町の石けん工房では
全部芳香蒸留水なんです。
例えば、
長夏石けんは、
湯河原町で採れた橙の摘み果と
枝と葉を使って作りました。
蒸留の様子
この芳香蒸留水を使ってできた
長夏石けん
完売しました。
ありがとうございます
*
という芳香蒸留水のお話でした・・・
が
植物を蒸留していると
いろいろ思うところがあるんです。
200ccの芳香蒸留水を作るために、こんなにたくさんの植物が必要なんだ・・・
って。
ただ生えていたいだけの植物からしたら、西村純子の都合で摘んできて、ちぎられて、ギューギューに詰められて、あげくの果てに熱せられて最後は抜け殻になって、
西村純子を残酷に感じるだろうな
って。
これだけの植物からの命をいただきながら作ったところで、石けんと環境の影響とか証明できる訳でもないし、私は何をしているんだろう・・・と思うのです。
でも、ハッとしたんですね。
証明できなくてもいい。
大事なことは、
自覚するってことなんだ。
私たちが香りを楽しむため、
自分たちの健康のために、
これだけの命をいただいているって、
知ったうえで
それでも選ぶのか?
という問いを自分にたて
自分で選んでいると
自覚すること。
無知とは恐ろしい
という感覚を少しでも持つこと。
(モッツァレラチーズの背景にある水牛の子ども、卵の背景にあるオスのひよこ達。あげたらキリはないけど、たくさんの残酷さが私たちの「おいしい」の裏にある。)
それが大事なんだって。
ものごとに陽だけは存在ぜず、陰と陽は必ずセットであるということ。
自然の恵みに対して、感謝と敬意だけでなく、畏怖の念も必ず持つこと。
芳香蒸留水を使った石けんを作るということは、そういうことを届けるための
メッセージなんだということ。
蒸留後の摘み果みかん
蒸留後3日間くらい天日干しのレモンバーム
蒸留後の植物たちは、こんな形になって
最後は星舟庵の土に還っていきます。
ここまでを伝えることなんだ。
*
自分が生きていくために、
他の命を殺すことは
避けて通れません。
だから、
必要以上に奪わずにいられるよう
自分に必要なモノと量を充分に知り、
本当に必要なモノと生きていく。
造った人の顔が見えて、
その人が大切に造ったモノを
大切に使う。
それがこれからの風の時代に
大事な感覚じゃないかな~と
思うんです。
自分さえよければいい
簡単、便利、安い
は
もう時代遅れです。
*
自分が生きていくために
誰かを殺している
湯河原町の石けん工房は
石けんを通じて
そんなことを伝えていきたく
今日もせっせと作っています。