セラピストに転職してすぐの出来事で、一番記憶に残っている忘れられない、大切にしている体験です。
順風満帆デビュー
2013年2月。養成学校を卒業し、大手のサロンで念願のデビューを果たしました。
今思い返すと、初日は緊張よりも喜びの方がずっと大きかったようにと思います。そして、毎日はとっても充実していました。
先輩はサービス業一筋の方がほとんどなので、お客さまから見るとOLを経験している私は珍しく映ったのだと思います。
一端にはなれなかたけど、プログラム開発の経験もあったり。お客さまが話すことに対して、大抵の仕事の話は共感できました。
「急に会社に泊まることになった時は、コピー用紙が入っている段ボールが活躍してくれるんですよ。中身をだして、かけると意外と暖かく仮眠できるんです~」
なんて、SEのお客さまに徹夜対策の話をしたりしていました。
入社数か月で、いろんなNo.1を手にしました。
ご新規さまの戻り率、物販売上金額、お久しぶりのお客さまが定着したり。などなど。
完全に調子に乗っていました。自分が担当すれば、うまくいくと思いこんでいました。そんなある日、ひとりのご新規さまを担当しました。そこで事件が起きたのです。
カウンセリングが終わった直後、背後から先輩がやってきて、私に目くばせをしながらこう言いました。「施術の担当を代わらせていただきます。」
調子に乗った結果
「何かあったんだ・・・」そう思いながら、私は別のお客さまを担当しました。
その数分後
お客さまのものすごい金切り声が聞こえてきました。
「こんなのが受けたかったんじゃなかったわ!ちょっとお金、返してよ!一体どんな教育をしているの?このサロン?!」
繰り返し繰り返し、ものすごい剣幕で言っていました。私は施術をしながら血の気が引いていくのがわかりました。
背中を冷汗がつぅ~っと流れ、頭がクラクラしました。
「何の騒ぎ?」私が担当しているお客さまが目を覚ましました。
「お休みのところ大変申し訳ございません。」そう言うしかありませんでした。
動揺が声に表れないように、笑顔が引きつらないように、手の震えをお客さまへ絶対に伝えないように。
私が担当したお客さまをお見送りした後、先輩から呼ばれました。
「どんなところが悪かったのが一緒に考えてみましょう。きっと、今は頭が混乱していると思うから休憩に出てください。」優しく言われました。
言われた通り休憩に出ましたが、食事なんて喉を通る訳がありません。
でも、「体力勝負のお仕事だから食べなきゃ!」胃が動いていないのはわかりましたが、無理やりに詰め込んでサロンへ戻りました。
お客さまが金切り声をあげた理由
お客さまは、なぜ金切り声をあげなければいけなかったのでしょうか?その答えは「ご新規さまなのに説明が足りなった」、です。
お客さまの納得した手ごたえがないまま、私は店内へ入れてしまったのです。どうしてそうしたかは、私が1番よく知っています。
ご新規さまを1人でも多く担当したかったから。戻り率No.1でいたかったから。ただそれだけでした。
先輩と話をしている最中、足はずっとガクガクするし、立っているだけなのに辛い。
頭はクラクラしてくる。そしてついに、「すいません!」と言ってダッシュしトイレへ駆け込み、嘔吐しました。鏡に映る私の顔は真っ青でした。
なにを学んだのか?
ご来店のお客さまに、不愉快な思いをさせてしまった。周りのお客さまにも、不快な思いをさせてしまった。
先輩にはものすごい迷惑をかけてしまった。サロンの看板に泥を塗ってしまった。全て自分のエゴから起きた出来事・・・
翌日からワタシは勢いを失いました。お客さまとの会話は全く弾みません。電話対応も散々。会計もミス連発。
休憩室の椅子へガクっと座り、ふぅ~と深いため息がもれました。窓から外を眺めると雨が降っていました。今朝のような細かい霧雨。
いつも霧雨の日はこの記憶を呼び起こします。そして、胸をギューっとキツく締めつけます。
その度に
「サロンの主役はお客さまである。」
この思いを胸に刻みこみます。それは、今も変わることはありません。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。